研究課題
生活習慣病の要因である肥満や高脂血症は、脂質代謝異常に起因する。脂質代謝の基盤として注目されている細胞内脂肪滴は、種々細胞に普遍的に存在し脂質の蓄積と利用を担う構造体である。絶食により一過的に脂肪蓄積が亢進するマウス肝で、脂肪滴局在タンパク質のADRPが顕著に誘導され、そのADRPは通常の脂肪滴や膜画分とは異なる中間比重画分に分布することを見出した。培養肝細胞HuH-7に脂肪酸を添加すると、ADRPが誘導され脂肪滴が生成するが中間比重脂肪滴は生じない。一方、グルカゴン刺激すると中間比重脂肪滴が出現した。この反応はジブチリルcAMPで再現され、Aキナーゼ阻害剤によって抑制されたことから、肝細胞内脂肪滴形成を伴う脂肪蓄積に、グルカゴン刺激によるcAMP依存性の調節機構が存在することが示された。細胞内でどのように新しく脂肪滴が作られるのか、その仕組みはまだ十分には明らかになっていない。一説によると、小胞体がリン脂質二重層の間に脂質を溜め込み、小型のふくらみを形成し、それが出芽(budding)することによって脂肪滴になると言われている。また最近では、脂肪滴が小胞体やミトコンドリアなどと接触した複合体を形成している可能性が指摘される様になってきた。本研究で見出した中間比重脂肪滴は、ADRP量に対してTGが少なく比重がやや高い粒子である。そのよう特性を持つためには、発芽したばかりの小型粒子、あるいは小胞体膜と結合した状態の複合体など、いくつかの可能性が考えられる。本研究で示されたADRPの細胞内動態は、脂質代謝の変動時にADRPと脂肪滴が激しく動的に動いていることを示唆し、そして脂肪滴の形成が単に脂質の量で決ってくるのではなくむしろグルカゴンなどのホルモンによって調節された応答であることが示された。
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