研究課題/領域番号 |
19590077
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
戸部 敞 昭和大学, 薬学部, 教授 (90102368)
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研究分担者 |
中野 泰子 昭和大学, 薬学部, 准教授 (20155790)
谷岡 利裕 昭和大学, 薬学部, 助教 (80360585)
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キーワード | アンジオテンシンIII / アディポネクチン / PPAR gamma / グルコース代謝 |
研究概要 |
本年度はレニン-アンジオテンシン系の産生物であるアンジオテンシンII(Ang II)の代謝産物であるAng IIIの脂肪細胞における機能解明を目的として解析を行った。Ang III刺激した脂肪細胞ではAdn分泌が顕著に上昇し、このAdn分泌上昇は、PD123319の前処理により顕著に抑制した。一方で、脂肪細胞をirbesartanで単独刺激した場合、報告されているようにAdn分泌上昇が認められ、irbesartan/Ang IIIの共存によりAdn分泌は相加的に上昇した。さらに、Ang III誘導And分泌上昇はPPARγ阻害剤により抑制すること、また、PPARγの転写活性化がAng III刺激により約2.5倍上昇することを見出した。次に、Ang IIIによるグルコース取り込み能に及ぼす効果を検討した。その結果、Ang III刺激により時間依存的にグルコース取り込み能の顕著な上昇が認められ、刺激12時間後に約3倍に上昇し、このグルコース取り込み上昇はPD123319の前処理により顕著に抑制した。一方で、irbesartanを前処理した場合には効果は認められなかった。また、Ang IIIによるグルコース取り込み上昇を担っている分子がglucose transporter 1 (GLUT1)であることを明らかにした。Ang IIIは脂肪細胞において主にAT2Rに作用し、Adn分泌およびグルコース取り込みを上昇させることで抗糖尿病、抗動脈硬化、抗炎症に作用している可能性が考えられ、Ang III-AT2Rシグナル伝達経路の重要性が示唆された。今回の結果は、脂肪細胞におけるAng IIIの新たな機能であると考える。
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