研究概要 |
本研究では、細胞外分泌型ADA(ADGF/CECR1)の脊椎動物における生理機能を明らかにすることを研究目的としている。今年度は、脊椎動物由来の細胞外分泌型ADAの酵素学的性状を明らかにした。このためにカエル、ニワトリ、ヒトのADGF/CECR1cDNAをそれぞれ単離し、リコンビナント蛋白を作成し、それらの酵素学的性状を脊椎動物間で比較するとともに、無脊椎動物由来のADGF/CECR1蛋白(IDGFおよびMSI)とも比較して、分子進化的考察を行った。 方法は、細胞外分泌型ADA(ADGF/CECR1)cDNAをそれぞれ単離し、大腸菌を用いて活性のあるリコンビナント蛋白を作成した。次にADA活性について、アデノシン、デオキシアデノシン、AMP、ADP、ATPを用いて基質特異性の解析を行うとともに、アデノシンを基質とした場合のKm,Vmax,kcatを求めた。さらにDCFやEHNAなど既知の細胞内ADA阻害剤を用いた阻害特異性を調べた。その結果、脊椎動物間、及び脊椎・無脊椎動物間で、酵素特性に多くの共通性が見られることが明らかとなった。次に脊椎動物由来の細胞外分泌型ADAが、細胞増殖活性を示すか否かを調べた。その結果、カエル由来の細胞外分泌型リコンビナントADAは、昆虫胚由来の培養細胞NIH-Sape-4に対しても増殖促進活性を示すことを見出した。これらの結果は、脊椎動物由来ADAと無脊椎動物由来ADAが共通の作用メカニズムを有していることを示唆する重要な知見である。
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