本研究では、細胞外分泌型ADA(ADGF/CECR1)の脊椎動物における生理機能を明らかにすることを研究目的としている。今年度は、 ADGF/CECR1のタンパクおよび遺伝子発現を抑圧することによる胚発生異常の生化学的解析を行った。脊椎動物由来のADGF/CECR1の個体発生における重要性を示すために、モルフォリノオリゴを利用し、個体レベルで特異的にADGF/CECR1のタンパクおよび遺伝子発現を抑制することに成功した。そして、形態形成に及ぼす影響を解析した。その結果、カエル胚発生時でのADGF/CECR1のタンパク発現を、2細胞期の両細胞で特異的に抑圧すると、その後形成される体節構造が異常になることを見出した。そしてこのような発現抑圧胚について、 RT-PCRによってMyoDやMyf5など、各種分化マーカー遺伝子を用いて分子レベルでの異常を検出したところ、これらの遺伝子発現が顕著に変動することを見出した。さらに、アデノシン、またはアデノシン受容体のアゴニストを原腸腔へ注入し、その後の胚発生を観察すると、モルフォリノオリゴを作用させた場合と同様な形態異常が起こることを見出した。以上の結果からこの形態異常は、アデノシン受容体を介したシグナリングに影響した結果であることが示唆される。また、アデノシン受容体の各サブタイプ問の機能分担と、アデノシンシグナリングの異常との因果関係を予測させる点からも興味深い知見である。
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