研究概要 |
免疫増強作用を有するCpG-ODNをDOTAPおよびcholesterol (Chol)またはその誘導体であるDC-cholesterol (DC-Chol)を構成脂質とする正電荷リポソームおよびモデル抗原であるOVAとともにマウスに経鼻投与することにより,粘膜免疫系のみならず全身免疫系のいずれもが賦活化されることを明らかとし, CpG-ODNの新たなアジュバントとしての可能性を示した. さらに,二種の正電荷リポソーム(CpG-DOTAP/CholおよびCpG-DOTAP/DC-Chol)投与群において,後者を用いることによりIgA, IgG産生が増強することを明らかとした.当該年度OVAとCpG-リポソームの経鼻投与による粘膜免疫応答の誘導の詳細な機構や,脂質組成の違いによる粘膜免疫賦活化の差異について検討を加え,以下の点を明らかにした. 1. CpG-DOTAP/DC-chol投与群ではCpG-ODNはTh1優位な全身免疫応答やCTLの賦活化に必要なアジュバントであるが,粘膜免疫の賦活化には必ずしも必要ではなかった. 2.CpG-DOTAP/DC-chol投与群のnasal passageにおいて著しいIL-6の産生誘導が観察され,さらに抗IL-6 receptor抗体の前投与によりIgA産生が顕著に抑制されたことから, CpG-DOTAP/DC-chol投与による粘膜免疫の賦活化にIL-6の関与を明らかとした. 3.粘膜免疫の賦活化にリポソーム構成脂質中のDC-Cholが深く関わることを明らかとした. 4.CpG-DOTAP/DC-cholは動物実験で用いられる強力な粘膜免疫賦活剤であるコレラトキシンと同等のIgA誘導能を示した.以上,当該年度得られた結果も含め,本プロジェクトで得られた知見を投稿論文として現在纏めている.
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