C/EBPαには血球系の細胞を分化誘導する作用があり、白血病治療の標的分子として非常に有効な分子であることが予想される。しかしながら、このC/EBPα遺伝子の発現及び活性制御機構に関しては、情報が少ないのが現状である。これまで当研究室では、骨髄芽球性白血病細胞のML-1細胞をATRAとGM-CSFの併用処理により相乗的に顆粒球方向へ分化誘導することに成功した。そこで本研究では、この分化誘導過程でのC/EBPαの発現、活性等についての解析を行った。昨年度の研究結果より、ATRAとGM-CSFの併用処理によりC/EBPαが発現誘導し、その標的因子であるID-1を相乗的に発現上昇していることが明らかとなった。また、ID-1遺伝子の発現制御領域におけるC/EBP結合領域へのC/EBPαタンパク質の結合はATRAによって引き起こされていることが明らかとなった。そこで次に、誘導剤のC/EBPαに対する影響として、C/EBPαタンパク質の修飾状態について調べた。まずser21のリン酸化抗体を用いてウェスタンブロット(WB)を行ったが、併用処理時においてリン酸化状態に変化は検出されなかった。一方SUMO化について免疫沈降法とWB法を用いて解析した結果、併用処理によるC/EBPαのSUMO化の誘導が検出された。さらにGM-CSF処理時において、ID-1遺伝子のC/EBP結合領域の上流0.5Kb近辺に位置するSTAT5結合領域へのSTAT5タンパク質の結合が確認され、STAT5とC/EBPαが複合体を形成している可能性が示唆された。 本研究の結果より、C/EBPαはATRAとGM-CSFの併用処理により、発現とSUMO化が促進され、STAT5等の因子と複合体を形成し、ID-1遺伝子の発現制御を行っている可能性が示唆された。
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