研究概要 |
ビタミンA酸(レチノイン酸,RA)の核内受容体を介さない新作用機構であるRAによる蛋白質の修飾反応(レチノイレーション・レチノイル化)を解明するために,RA抗体を用いる新規レチノイル化蛋白質高感度検出法の最適化を従来法と比較して行った。RA或いは放射標識[3H]-RAを処理したHL60細胞から調製した総細胞蛋白質を二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2D-PAGE)により分離した後,前者に対してはゲル中の蛋白質を膜に転写後RA抗体を用いて免疫染色を行い,後者に対しては増感・乾燥したゲルを一定期間フィルムに露光後,現像して可視化した。2D-PAGEパターンを比較したところ,両者は類似していた。次に,RAを処理した肌60細胞を破砕・超遠心して得られた上清(可溶性画分),及び,その沈殿物をCHAPS含有緩衝液中で再度破砕・遠心して得られた上清(沈殿画分)を調製し,両画分の蛋白質をMono Qカラムにより分離した。得られた各フラクション中の蛋白質について,一次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(1D-PAGE)により分離し,次いでRA抗体を用いて免疫染色を行ったところ,従来法で同定されたレチノイル化蛋白質をRA抗体によっても検知することができた。また,可溶性画分,沈殿画分中にRA抗体により検出された新規レチノイル化蛋白質が含まれることが明らかになったので,それら蛋白質の同定を現在行っている。以上の結果から,従来,放射標識[3H]-RAを用いたオートラジオグラフィー法で長期間を要して可視化されていたレチノイル化蛋白質は,RA抗体を用いる方法により,短時間で高感度に検出できることが明らかになった。
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