ARK5の活性化を阻害する化合物を検索することを目的とした。ARK5は細胞増殖シグナル伝達の中心的なリン酸化酵素AKTにより活性化し、AMP活性化リン酸化酵素(AMPK)活性によりがん転移を促進することが知られている。ARK5の活性化を阻害する化合物を見いだすことは、がん進展の治療薬となりうる。糸状菌Aspergillus terreus NBRC6123株の菌体抽出物asterriqulnone(ARQ)およびARQのdihydroxy-p-benzoquinone部分の水酸基を化学修飾したARQ誘導体を被験化合物として、培養細胞を用いたAKTの活性化およびAMPKの活性化の抑制を検討した。ARQ、ARQDAc、ARQAcMe、ARQAc、ARQMeは、大腸がん細胞株SW480の低栄養培地でのAMPKの活性化を顕著に抑制した。また、低栄養培地への血清添加によるAKTの活性化も抑制した。腫瘍移植モデルマウスによる抗がん作用の検討では、ARQはマウスの顕著な体重減少を示し治療目的としては用いることが出来なかった。一方、ARQAcMeは、投与マウスに対する影響は認められず、コントロール群に比しマウス肺がん細胞の造腫瘍性を抑制する傾向が認められた。このことから、本研究で見いだされたARQ誘導体は、新たな作用機序を持つ抗がん剤の候補になりうることが示された。
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