研究課題/領域番号 |
19590095
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研究機関 | 国立精神・神経センター |
研究代表者 |
大木 伸司 国立精神・神経センター, 神経研究所・疾病研究第六部, 室長 (50260328)
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研究分担者 |
山村 隆 国立精神・神経センター, 神経研究所・疾病研究第六部, 部長 (90231670)
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キーワード | 免疫学 / 自己免疫疾患 / サイトカイン / IL-17 / レチノイン酸 / 核内受容体 |
研究概要 |
近年自己免疫疾患とより強く連関する新たな免疫担当細胞集団としてIL-17産生性T細胞(Th17細胞)が同定され、その後短期間の間に驚くべき勢いでTh17細胞研究が展開されている。生体内におけるこの他のIL-17産生細胞としては例えはγδT細胞などが報告されているが、昨年度の本研究における解析から、糖脂質刺激を受けたiNKT細胞自身も相当量のIL-17を産生することが明らかとなったため、活性化iNKT細胞によるIL-17産生制御メカニズムの解明を、Th17細胞によるIL-17産生メカニズムとの比較解析を通じてすすめることにした。生体内におけるTh17細胞のIL-17産生制御メカニズムに関して、レチノイン酸による制御の重要性が報告されているため、天然型レチノイン酸(all-trans retinoic acid;ATRA)と合成レチノイドAm80の、IL-17産生に対する効果を比較解析した。Th17細胞のマーカー遺伝子であるRORγtの発現を指標としたナイーブT細胞のTh17細胞への分化と、分化したTh17細胞よるIL-17産生に対して、ATRAとAm80はいずれも抑制的に作用し、レチノイドのin vivo投与は、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の発症を有意に抑制した。いずれの場合も、ATRAに比較してAm80がより強い作用を示した。ATRAとAm80は、αGalCer刺激したiNKT細胞のIL-17産生も抑制したことから、レチノイドがTh17細胞とiNKT細胞からのIL-17産生の共通点に作用するものと考えられた。さらに我々は、Am80が制御性T細胞からのIL-10産生も抑制することをあらたに見出した。iNKT細胞は、自己免疫疾患の発症に対して促進的あるいは抑制的に作用する二面性を有することがから、Am80によるIL-17産生とIL-10産生のバランスの理解は、iNKT細胞が関与する種々の免疫疾患の理解と、レチノイドによる制御の可能性を示唆するものと考えられた。
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