これまでの研究で、フラン融合4環系化合物が顕著な抗インフルエンザウイルス活性を示し、母核上にベンジルオキシ型置換基を導入した誘導体が最も有効なリードとなることが見出されている。本年は、ベンジル置換基のバリエーションとして、ピリジン環を有する誘導体、およびベンジルオキシで架橋された二量体型誘導体の設計と合成、生物活性評価を行った。 ピリジン環を導入したベンジルオキシ置換誘導体の合成 フラン融合4環系母核に、ピリジン環を有するベンジル型置換基を導入した誘導体の合成について検討を行った。母核の構築については、既に申請者らが確立しているベンゾシクロブテン誘導体の連続的電子環状反応を応用し、置換基導入にはWilliamsonエーテル合成法により、α-、β-、およびγ-位に窒素原子を有する3種の含ピリジン誘導体合成を達成した。 新規二量体型誘導体の合成 良好な抗インフルエンザウイルス活性を示したベンジルオキシ置換様式を基にして、ベンジルオキシ基を架橋としてフラン融合4環系骨格を二量化させた新規誘導体の合成を行った。本合成も、Williamsonエーテル合成法により、高収率で目的を達成できた。 新たな合成化合物の生物活性評価 合成したフラン融合4環系化合物群について、抗インフルエンザウイルス活性の評価を行った。アッセイにはインフルエンザA/Aichi株を用いた。その結果、いずれの誘導体もポジティプコントロールとなるベンジルオキシ体に匹敵するウイルス増殖抑制効果を示すことが明らかとなった。
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