研究概要 |
NESアンタゴニスト作用蛋白核外移行阻害天然物である1'-acetoxychavicol acetate(ACA)の作用メカニズムに基づき、分子軌道計算によって活性向上が期待される3位にフッ素、塩素、臭素原子を導入したアナログについて合成し、それらがACAより強力なNES含有蛋白の核外移行阻害活性を示すことを明らかにした。また、標的蛋白であるCRM1とのドッキングスタディによりACAより低い相互作用エネルギーが算出された1'位にn-pentanoy1基、isohexanoy1基、n-propylcarbamoy1基を有するアナログを合成し、いずれもACAより強力な活性を示すことを明らかにした。また、同様にNESアンタゴニスト作用蛋白核外移行阻害天然物であるvaltrateについては、分子内に存在する3種のアシル基の嵩高さを改変した5,6-dihydrovaltrate類を合成することにより、1位水酸基上のアシル基についてisovalery1基よりacety1基の方が活性が向上することを見出した。 一方、NES非アンタゴニスト作用蛋白核外移行阻害天然物であるpeumusolideAについては、NES含有蛋白であるMEKが高度に亢進している培養腫瘍細胞に対して選択的な細胞毒性を示すことを明らかにした。さらに、peumusolideAの側鎖を簡略化したアナログについて両エナンチオマーを合成し、そのCDを測定することで天然物が主としてS配置であることを見出すとともに、キラルHPLCによるさらなる検討によってS:R=82:18の混合物であることを明らかにした。また、これらアナログのうちS体には、天然物とほぼ同等の、R体には若干減弱した活性が認められるとともに、S体がMEK亢進腫瘍細胞に対して選択的な細胞毒性も有することも明らかにした。
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