研究概要 |
本研究を行うに当り、まず、in vivoモデル動物として用いるカイコ(Bonbyx mori;系統:Fuyo Tukubane)の蚕種卵(1000個/週)を購入し、感染実験に使用可能な5齢虫まで約20日間飼育した。このカイコの背脈管(ヒトの血管に相当)に試験菌:臨床分離カンジダ・アルビカンス(Candida albicans TIMM1768株)を注射することでカンジダ感染モデルカイコを作成した。天然資源のスクリーニングは、1サンプルあたりカンジダ感染モデルカイコ3頭に、背脈管から投与し、試験菌液のみを注射したカイコより延命効果が認められるものを検討候補サンプルとして選択した。その結果、真菌の培養液中より1サンプル(FKI-4238株)に延命効果が確認された。なお、スクリーニングには、北里生命科学研究所において提供された真菌、放線菌および細菌の培養液あるいは、その分画濃縮液、約1,500サンプルを用いた。 今回、延命効果が認められた真菌FKI-4238株の培養液はペーパーディスク法では抗真菌活性を示さず、カイコに投与した際にその効果を示すことから、プロドラック様成分が生産されている可能性が予想される。したがって、本スクリーニング系でのみ抗真菌活性を示すサンプルは、ペーパーディスク法など他の従来の評価方法では選択される可能性は低く、in vivo評価系を導入した本研究によってのみ選択されたことが言える。また、ペーパーディスク法において抗真菌活性を示したものも30サンプル存在したが、これらのすべてはin vivo評価系では抗真菌活性を示さず、中には毒性を示すものも存在した。このことから、スクリーニング初期の段階で、抗真菌活性を示す成分の代謝、安定性および選択毒性を同時に判断できる有効なスクリーニング系と考えている。 現在、本真菌を再培養したものから抗真菌活性成分の単離精製を試みている段階で、今後、その構造を明らかにする予定である。またスクリーニングについても継続して実施する。
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