研究概要 |
昨年度に引き続き、真菌症対策の一環として、カイコを宿主とした簡易カンジダ感染モデル(臨床分離カンジダ・アルビカンスTIMM1768株を感染)を用い、天然資源より抗真菌剤のリードと成り得る新規化合物の発見を目的に探索研究を実施した。本年度はペーパーディスク法で抗真菌(カンジダ)活性を示した微生物の培養液(真菌および放線菌など)を中心にカンジダ感染モデルで評価し、治療効果(延命効果)が認められる培養液をスクリーニングした。北里生命科学研究所において提供された微生物の培養液5,972サンプルを評価した結果、10サンプル(真菌:8サンプル、放線菌:2サンプル)に延命効果が確認され、このうち真菌の選択株3サンプル(FKI-3987、4330および4850株)について検討した結果、各選択株より抗真菌活性を示す成分を単離した。 FKI-3987株より単離した成分について、NMRを中心とした各種機器分析により構造解析を行った結果、1964年Godtfrdsonらにより発見されたtrichoderminと同定し(Acta.Chem.Scand.,19,1088-102,1965)、さらにカイコ感染モデルにおいて、50μg/幼虫の濃度で延命効果を示すことが明らかとなった。本化合物はトリコテセン類に属するマイコトキシンではあるが、カイコに対して毒性を示すことなく延命効果を示し、また類縁化合物が数多く存在することことから、これらのカンジダ感染モデルにおける抗真菌活性に興味が持たれる。 なお本年度が最終年度となるが、現在、単離した活性成分については構造解析を進めており、他の選択株についても今後も順次検討を行う予定である。また、昨年度の報告書に記載した、真菌FKI-4238株についてはプロドラック様成分の可能性が予想されたが、培養の再現性が得られず、残念ながら検討を断念した。 新規化合物を得ることができなかたが、本評価系を用いたスクリーニングは、抗真菌活性のみでなく、化合物の代謝、安定性および毒性を同時に判断可能なスクリーニング系と考えられ、より実用的な化合物の選択が期待できる。
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