リン酸は生体内に普遍的に存在し、核酸の加リン酸分解やシグナルタンパク質のリン酸化など多くの生体機能に関与している。本研究課題では、ヌクレオシド加リン酸分解酵素を分子標的とした創薬研究をfragment-based drug design(FBDD)に基づいて展開させた。すなわち、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)阻害剤の創製研究では、PNPと親和性を示す9-デアザグアニン誘導体とリン酸ミミック(CF_2PO_3H_2)をスペーサで連結したPNP二基質複合型アナログを設計・合成した。その結果、臨床で治療効果を発揮し得る高い阻害活性を有する阻害剤の創製に成功した。今後のPNP阻害剤創製において有用なリード化合物となることが期待される。また、スペーサ部に窒素原子を導入したPNP二基質複合体アナログの合成を行った。このアナログは、リン酸ミミックを組み入れたPNP遷移状態アナログと見なすことも出来、生体内の低いリン酸濃度においても高い阻害活性及び高い選択性を示すPNP阻害剤となると推定される。一方、チミジンホスホリラーゼ(TP)阻害剤の創製研究においては、TPと親和性を示すチミジン誘導体とリン酸ミミック(CF_2PO_3H_2)をクリック反応で連結し、新規TP二基質複合型アナログの創製を企図した。本年度は、リン酸ミミック(CF_2PO_3H_2)を有するアジド誘導体とエチニル基を有するピリミジン誘導体のHuisgen反応について詳細な検討を加えたところ、所望のクリック生成物が高収率で生成することを見出した。その他、スフィンゴミエリナーゼ阻害剤SMA-7の構造展開を企図して、SMA-7関連化合物の新規合成法を確立した。
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