研究概要 |
活性型ビタミンD_3(1α,2-ジヒドロキシビタミンD_3;1α,25(OH)_2D_3)は核内受容体の一つであるビタミンD受容体(Vitamin D Receptor;VDR)と特異的に結合し、標的遺伝子群の発現を転写レベルで制御している。その生理活性は、カルシウム調節、細胞の分化誘導作用、免疫調節作用などと多岐にわたる。ビタミンD_3誘導体などのVDRリガンドは骨粗鬆症や抗ガン剤などとして期待されており、VDRは骨粗鬆症治療薬や抗ガン剤をはじめとした医薬品開発のターゲット分子となっている。当研究者らは、これまでに、VDRリガンド結合部位(LBD)の構造に基づいた1α,25(OH)_2D_3アナログの設計および合成を行ってきた。1999年に報告された非セコステロイド型リガンドであるLG190178はラセミ体として報告され、4つ存在する立体異性体の活性についての詳細は不明であった。そこで、コンピュータによるモデリングにより、LG190178の4つの立体異性体のVDR結合能に差が認められるか検証した。MacroModelのConformational Searchを用い、最安定構造を結合モデルとした。その結果、(2S,2'R)体が最も安定であり、(2S,2'S)体(2R,2'R)体、(2R,2'S)体の順となった。また、4つの立体異性体の合成を行った。転写活性を調べたところ、(2S,2'R)体;YR301のみが強い活性を有することを見いだした。(Bitoorg.Med.Chem.Lett.,18,120-123(2008))今年度は、さらにYR301とVDRの複合体のX線構造解析に成功した。(Acta Crystallogr.F,64,970-973(2008))それによりYR301の詳細な結合様式が明らかとなった。また、コンピュータによるモデリングの妥当性も証明できた。
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