研究概要 |
高等植物の二次代謝能発現に寄与することが期待されるmonomer型GTP結合タンパクのうちRac/Rop型GTPaseに関する知見を得る目的で、これをコードしている遺伝子のクローニングと発現特性の解析を試みた。 ゴマノバグサ科植物であるScoparia dulcisの幼植物体を材料としてRACE法により2種類のGTPase遺伝子(Sdrac-1並びにSdrac-2、GenBank Accession No., FJ159428, FJ1550362)をクローニングし、その全長の配列を決定した。それぞれのORF部分をプローブとしてサザンプロット法によりS. dulcisゲノム中の当該遺伝子の構成を確認したところ、いずれの場合も一つのメインシグナルと共に2-3個の弱くハイブリダイズするシグナルが検出されたことから、S. dulcisのRac/Rop様GTPaseはmulti-gene familyを形成していることが考えられた。 数種類の異なった外部刺激に対するSdrac-1、Sdrac-2の発現変化をRT-PCRによって解析した結果、どちらの遺伝子もmethyl jasmonateやエチレン刺激に対して顕著な転写活性の増加が見られたのに対し、Caイオノフォア処理には応答しないことが示された。これらの結果から、S. dulcisの細胞内伝達カスケードの中でSdrac-1、Sdrac-2がコードするRac/Rop型GTPaseは、プライマリーな外部刺激物質の受容と二次メッセンジャーであるCaレベルの上昇との間にある何らかのプロセスで転写活性の上昇を伴って機能している可能性が示唆された。
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