研究概要 |
本研究では,より微生物学的に安全な透析液を供給するために,これまでに申請者が検討・開発してきた蛍光活性染色法や分子微生物学的手法を用い,透析液およびその調製システムにおける細菌現存量と細菌群集構造の変化を明らかにし,透析液の迅速・高精度な微生物管理法を提案することを目的とした.平成20年度の成果は以下のとおりである. 1)前年度の結果より,透析液およびその原水(RO水)中の細菌数は,通常の蛍光顕微鏡法の検出限界に近いことがわかったことから,より細菌数の少ない試料について高精度な測定ができる細菌数自動測定システムを用いた研究を進めた.その結果,検出限界を大幅に改善できた. 2)RO水調製プロセスにおける細菌群集構造の変化を,変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法により明らかにした.また得られたrRNA遺伝子増幅産物の配列解析を行なった結果,ろ過や貯留などの各処理により,優占種が大きく変化することがわかった. 3)蛍光活性染色法およびマイクロコロニー法と細菌数自動測定システムを併用することにより、透析液調製システムにおける細菌数の変化の迅速モニタリングが可能であること,透析液調製過程における細菌群集構造の変化および優占種の推定は変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法により可能であったことから,これらの方法により,透析液調製システムの適切な維持管理が可能となると考えられる.
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