研究概要 |
結核菌生菌で見られるサイトカンのBCG亜株感染A549細胞からのIL-6、IP-10、およびTNFαの産生量は亜株間にあまり差が見られなかった。一方IL-8産生量はConnaught株ではその2.5倍(約1,000pg/ml)、Tokyo株、およびMoreau株では3倍程度(約1,300pg/ml)のIL-8産生誘導がみられた。また、IL-1β産生量はPasteur株(約100pg/ml)、Tokyo株(約75pg/ml)、およびMoreau株(約60pg/ml)で産生量が高かった。BCG感染U937細胞でも類似した結果が得られた。結核菌はBCGに比べて非常に強いサイトカン誘導活性がみられた。抗酸菌の細胞壁成分は脂質に富んでおり、これらの脂質成分は、自然免疫系に関与しているレセプター、toll like receptors(TLRs)のリガンドとであることがよく知られている。菌体脂質成分だけでなく、核酸成分であるCpGもまた、TLRのリガンドであることが知られている。そのシグナル伝達様式はIL-1レセプターからのものと共有していることが知られている。病原性の異なる抗酸菌(結核菌とBCG)間で、TLRからのNF-κBのレポーター遺伝子の活性化を調べたところ、結核菌に強い誘導活性が認められたことから、結核菌の菌体成分中に病原性を強く引き起こすことが推察された。結核菌生菌によるNF-κBの誘導は死菌にくらべてはるかに強く、菌体成分の違いだけでは説明出来ないことが明らかとなった。また、この現象は生菌特異的な細胞傷害活性とよく相関していた。
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