小腸での薬物代謝酵素および薬物輸送担体の遺伝子発現や機能に対するプロバイオティクスの影響、ならびにその制御機構を明らかにし、疾患予防や薬物療法の効率化等、プロバイオティクス摂取の臨床的意義を明らかにすることを目的に、研究を遂行した。 In vitro:ヒト消化管のモデルである3週間培養したCaco-2細胞に、プロバイオティクスとしてLactobacillus casei (L.casei)を暴露した結果、(1)CYP3A4遺伝子発現およびCYP3A活性が、L.caseiの暴露濃度依存的に減少することが明らかとなった。現在、この制御機構の解明を行っている。(2)L.caseiがSULT活性およびUGT活性を低下させること、およびBCRP機能を阻害することが明らになった。以上より、医薬品が小腸でCYP3A4代謝や抱合反応を受ける場合、BCRPにより輸送される場合には、その体内動態がプロバイオティクス(L.casei)との併用により変化し、効果や毒性に影響を及ぼす可能性があることが示唆された。 In vivo:雄性ラットにAcetaminophen(AAP)を十二指腸投与した時、グルクロン酸抱合体および硫酸抱合体のAUCはL.caseiの併用により有意に減少したが、AAPの静脈内および門脈内投与時には影響は認められなかった。従って、in vivoにおいてもL.caseiが小腸の抱合酵素活性および薬物輸送担体機能を変化させる可能性が示唆された。現在、ヒト消化管でのCYP3AおよびP-gpに対するプロバイオティクスの役割を評価することを目的とした臨床試験を実施中である。
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