【目的】申請者は、カドミウム(Cd)による抗がん機構解析の一環として、Cdの細胞浸潤能に対する影響について、種々の重金属による影響と比較し検討を行った。申請者は野生型及びメタロチオネイン(MT)欠損マウス由来線維芽細胞を用いて、MT欠損細胞ではマトリックスメタロプロテイナーゼ2(MMP2)遺伝子発現が減少しており、MMP2遺伝子産物である68 kDa type IVコラゲナーゼ活性も低下していることを明らかにしている。そこで、これら細胞に種々の金属を曝露し、カドミウムによるMT誘導能とMMP2活性との関係を明らかとすることを目的に検討を行った。また、MMP2は細胞浸潤能に関係する蛋白質であるため、CdによるMT誘導の細胞浸潤能に対する影響についても併せて検討した。 【方法】細胞:野生型及びMT欠損マウス由来線維芽細胞を使用した。両細胞に種々の重金属(Cr^<6+>、Fe^<3+>、Ni^<2+>、Cu^+、Zn^<2+>及びCd^<2+>)を曝露し24時間培養後、その培養液をゼラチンザイモグラフィー用サンプルとした。細胞浸潤能:Chemoinvasion assayを用いて細胞浸潤能を測定した。 【結果および考察】今回検討した金属のうち、Crが野生型及びMT欠損細胞ともに濃度依存的にMMP2活性を増加させた。一方、MTの誘導剤であるZnやCdの曝露はMMP2活性に変化を与えなかった。このことより、MT欠損はMMP2活性の低下を引き起こすものの、CdによるMT量の増加はMMP2活性に影響を与えないことが明らかとなった。一方、細胞浸潤能はMT欠損細胞の方が、野生型細胞に比べ顕著に増加していた。MMP2活性と相反する結果となったことより、MTがMMP2以外の因子を介して細胞浸潤能に影響を与えている可能性がある。
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