毎年の多剤耐性緑膿菌(MDRP)による院内感染の新聞報道に、いつものことながら、病原菌対策の重要性を痛感させられる。緑膿菌は、多様な環境下に生育するグラム陰性細菌であるが、深刻な院内感染を引き起こすが如く、その適応能力を発展させている場合もある。一方、あたかも多細胞真核生物のように、シグナルを介して菌集団全体での協調した遺伝子発現制御機構が存在する。これは、細菌細胞間の低分子物質を介した情報伝達機構を利用したものであり、その一部はクロラムセンシングシステム(QS system)として知られている。我々は、このQS systemに転写因子グループFFRP群が関与していることを見い出した。平成19年度は、QS systemで発現制御されている病原性因子でもある第二次代謝物・ピオシアニン色素の産生におけるFFRP群の転写制御の関与について研究を行った。すなわち、FFRP群によるピオシアニンの産生量の変化をHPLCで測定し、RT-PCR法によるmRNAの発現を解析した。その結果、8種のFFRPのうち3種がピオシアニン色素の産生経路の最終酵素の生産量を減少させていることを見い出した。
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