研究概要 |
1.標識薬剤および実験動物(1)標識薬剤:脂肪酸代謝を評価する薬剤として[I-131]標識脂肪酸([I-131]9MPA)を,糖代謝を評価する薬剤として[C-14]標識糖([C-14]2DG)を用いた。(2)実験動物:正常動物群(ラット;正常)および心疾患作製動物群(ラット;心不全(急性期、慢性期))を用いた。 2.(1)(研究内容)正常心臓および心不全(急性期、慢性期)心臓における集積性経時変化実験,局所集積性画像化実験(ARG)および心筋組織標本作製等を行い、心不全疾患の進行過程(正常→心不全急性期(炎症期;心臓拡張)→心不全慢性期(心筋線維化))における心臓エネルギー獲得機能(脂肪酸代謝機能および糖代謝機能)の変化について検討した。(2)(結果・考察)心臓集積性経時変化実験において標識脂肪酸の場合,検討したいずれの時間においても(正常心筋集積性)>>(心不全慢性期心筋集積性)=(心不全急性期心筋集積性)であり、これら3群の(時間-集積性)曲線はいずれも投与直後において最大の集積性を示し,その後経過時間と共に減少していくことがわかった。一方標識糖の場合,検討したいずれの時間においても(心不全慢性期心筋集積性)>(正常心筋集積性)=(心不全急性期心筋集積性)であり,心筋集積性は3群とも経過時間と共に非常に緩やかに増加していくことが確認できた。これらの結果から、心不全の病期進行過程の代謝機能に生じる変化として,脂肪酸代謝機能は急性期において障害を受け,その後機能が回復することなく障害の影響がそのまま慢性期に残り、また糖代謝機能においては,慢性期になって初めてその緩やかな亢進が見られることから"心不全急性期における著しい心筋活動エネルギー不足"の知見が得られた。この知見はARG画像および心筋組織染色画像より得られた結果からも支持された。
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