本年度は、ヒト赤血球膜における薬物輸送と薬物相互作用・有害反応の場としての赤血球の研究をさらに進める目的で、リバビリン及びヌクレオシドトランスポーター(ENT)の代表的基質であるウリジンの輸送特性を中心に、ヒト洗浄赤血球及びヒト赤血球膜小胞を用いて解析し、以下の結果を得た。 1.ヒト洗浄赤血球におけるリバビリンおよびウリジンの取り込みには濃度依存性(飽和性)が認められ、またENT1阻害剤であるS-(4-Nitrobenzyl)-6-thioinocine(NBMPR)によって阻害された。 2.ヒト赤血球反転膜小胞IOVsにおけるリバビリン及びウリジンの取り込みにも濃度依存性が観察されたが、赤血球の場合とは異なり、シグモイドカーブを示し、基質の親和性が低く見積もられた。 3.ヒト赤血球反転膜小胞においてNBMPRは、基質濃度が低い場合には取り込み促進効果を示し、高い濃度では取り込み阻害効果を示した。 4.ヒト赤血球膜小胞ROVsを用いた検討においても、IOVs同様、低い基質濃度ではNBMPRによる取り込み促進効果が観察された。 このように、洗浄赤血球と膜小胞において結果の乖離が見られた原因として、インタクトな赤血球内に存在している何らかの物質が通常はhENT1に作用し活性を調節しているが、赤血球膜を小胞化する際に消失している可能性が考えられた。リバビリンの主な副作用である血液障害は、その赤血球内移行と密接に関係するものと考えられる。この活性調節因子を解明することにより、リバビリンの赤血球内移行における分子メカニズムが明らかとなり、リバビリンの有害反応の回避へと繋がるものと期待される。
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