研究概要 |
本研究では、新規レニンアンジオテンシン系亢進AT_<1A>受容体過剰発現マウスとIgA腎症モデルマウス(HIGAマウス)を交配することにより、血管障害と糸球体硬化の進行する系を開発し、その機構を解析することを目的として研究を行った。AT_<1A>受容体過剰発現マウスの遺伝子型の判定法として、3プライマーを用いたPCR法を確立した。そしてHIGAマウスとAT_<1A>受容体過剰発現マウスの交配により,両者の遺伝的性質を有する個体を作製した。アンジオテンシンII受容体に対する抗体を用いて免疫染色を行ったところ、受容体過剰発現マウスの腎組織では小動脈血管平滑筋細胞と糸球体メサンギウム細胞に強く発現が認められた。さらに高齢の受容体過剰発現マウスでは、糸球体の硬化や小動脈には線維化と血管構築像の崩壊所見が認められた。野生型では老齢になっても糸球体硬化像は乏しく、血管構築像の変性所見は乏しかった。 HIGAマウスの凝固系活性化の特徴を検討するために、同マウスにリポポリサッカライド(LPS)を投与し、炎症を惹起させた。その結果、メサンギウム領域におけるフィブリンの沈着および、tissue factor, Factor V, Factor X, PAR1,2の発現とともに、同領域における細胞増殖とマクロファージの浸潤がみられた。さらにこれらの所見はコントロールマウスとしてのBalb/cマウスにくらべ、HIGAマウスのほうが顕著にみられた(論文投稿・改訂中)。
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