血液脳関門は従来から知られているトランスポーターによる脳への輸送系を制御するだけでなく、薬物代謝酵素(血液脳関門の薬物代謝能力が肝細胞に匹敵することを見出した)による酵素的制御機構も備えていることが示唆された(19年度研究実績)。そこで、研究代表者は、抗うつ薬の血液脳関門での薬物代謝の回避が、抗うつ薬の遅効性の改善に繋がるものと考え、引き続きラット脳毛細血管内皮の培養細胞を用いた薬物代謝実験を計画し、次のような結果を得た。 抗うつ薬は長期に投与されるため、抗うつ薬の長期投与による薬物代謝酵素への影響について、in vitroでの実験系を組み立てた。すなわち培養液にイミプラミンを添加し、常に細胞が薬物に曝露された状態で3週間培養した。この培養細胞を用い、生成されたイミプラミンの代謝物を一斉分析した。その結果、イミプラミンの長期曝露により血液脳関門に存在する薬物代謝酵素が誘導されることがわかった。 また、離乳直後のラットを一匹ずつ個別のケージで飼育し、社会的隔離ストレスモデルを作製することができた。しかし、今回時間的、経済的問題から、このモデルラットから脳毛細血管内皮細胞を取り出すところまでは至らなかった。今後の課題としたい。 以上、これらの研究成果は、うつ病に対する新たな薬物療法を見出すことが可能になると考える。
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