ヒト小腸ミクロソームを用いて、CYP3A4の基質としてテストステロンを、阻害薬としてはアゾール系抗真菌薬であるケトコナゾールを用いて、代謝阻害実験を行った。テストステロン6β-水酸化体の生成速度を、CYP3A4活性の指標とした。阻害実験結果をDixon plot解析しところ、ケトコナゾールはテストステロン6β-水酸化体の生成を競合的に阻害することが確認され、阻害定数(Ki値)は約3nMと算出された。次に、Caco-2細胞を用いた細胞内蓄積実験を行うことでケトコナゾールの細胞内非結合率を算出した。 ヒト小腸ミクロソームを用いたミダゾラムの代謝実験を行い、さらにミクロソームへの非特異的結合を測定して、非結合型濃度基準のミカエリス定数(Km)および最大代謝速度(Vmax)を求めた。ミダゾラムのKm値およびVmax値、ケトコナゾールのKi値を用い、非結合型ケトコナゾールが小腸上皮細胞内で競合阻害的にミダゾラムの代謝を阻害するとの仮定のもと、ミダゾラムの小腸アベイラビリティ(Fg)を算出した。得られた予測値は0.92となり、ヒトで報告されている値(0.88)と近い値となった。今後は、他のCYP3A4基質についても、同様に相互作用の程度が定量的に予測できることを確認する予定である。
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