研究課題/領域番号 |
19590165
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
池川 繁男 近畿大学, 薬学部, 教授 (90111301)
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研究分担者 |
三田村 邦子 近畿大学, 薬学部, 講師 (70242526)
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キーワード | 胆汁酸 / オキシステロール / テトラヒドロコルチコステロイド / マススペクトロメトリー / エレクトロスプレーイオン化 / N-アセチルシステイン / グルクロニド / サルフェート |
研究概要 |
病因・病態を化学の目で把握・理解し、適切な薬物療法を設定する上で、組織の変化や血液、尿などの体液中に含まれる成分の体内動態を明らかにすることが強く求められる。こうした視点に立って、今年度は昨年度の実績を基に質量分析法を基盤として以下の研究を行った。初めに、胆汁酸の代謝活性中間体であるアシルアデニレートやCoAチオエステルがグルタチオンS-トランスフェラーゼの作用を受けてN-アセチルシステイン(NAC)抱合体に変換されるばかりか、肝毒性や大腸癌のプロモーターとして知られるリトコール酸(LCA)とNACをラットに投与すると、LCAがNAC抱合体として尿中に解毒排泄されることを世界に先駆けて明らかにし、NACがLCAによる毒性の発現を抑止する上で重要な役割を果たす可能性のあることを示した。また、胆汁酸のグルタチオン(GSH)抱合体に特徴的なトランジションイオンをモニタリングするメタボローム解析法によって、ラットの胆汁中に胆汁酸がGSH抱合体として排泄されることを明らかにし、胆汁酸の新規代謝経路の存在を示した。一方、下垂体-副腎皮質系疾患では尿中に排泄される抱合型テトラヒドロコルチコステロイドが診断指標として重要視される。そこで、昨年度のグルクロニドに関する知見を基に、硫酸抱合体標品18種を合成するとともに、それらのLC/ESI-MS/MSによる高感度直接一斉分析法を開発し、本法が内分泌・代謝疾患の病態解析に有用なことを示した。引き続き、昨年度合成に成功した重水素標識7-ケトコレステロールサルフェートを内標準物質として用い、動脈硬化症と関連して重要視される硫酸抱合型オキシステロールのLC/ESI-MS/MSによる高感度直接一斉分析法を開発し、本法が脂質代謝異常症の病因の解明、病態の解析に有用なことを示した。
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