研究概要 |
平成19年度には,アトピー性皮膚炎モデル動物(NC/Ngaマウス)を用いてFTY720の有用性を明らかとした.即ち,自然経過で皮膚炎を発症したNC/Ngaマウスをプラセボ群(n=8,注射用水を週3回経口投与),ベタメタゾン軟膏群(n=8,週6回塗布),FTY720群(n=8,FTY720(3mg/kg)週3回経口投与)およびFTY720+ベタメタゾン軟膏群(n=8,FTY720(3mg/kg)週3回経口投与+ベタメタゾン軟膏(週6回塗布))に分け,治療効果を検討した.その結果,FTY720とベタメタゾン軟膏を併用すると,有意なADスコアの改善が見られた.平成20年度は,この治療効果を組織化学的,生化学的および免疫学的に明らかとすることを目的に研究を行った.その結果1)ベタメタゾン群で見られた脱毛はFTY720群で有意に改善した(P<0.05,Mann-Whitney's U-test).2)組織所見からも,FTY720とベタメタゾン軟膏の併用療法で有意な皮膚炎の改善が見られた.一方,3)血中IgE濃度は,FTY720群およびFTY720とベタメタゾン軟膏の併用群で減少傾向が見られたものの,個体差が大きく,統計学的に有意な差は見られなかった.現在,ヒトのアトピー性皮膚炎の病勢評価に用いられている血中TARC(Thymus and activation-regulated chemokine,CCL17)の測定,免疫応答を抑制するサイトカインであるIL-10の血中濃度の測定およびIL-10を産生する細胞の同定を行いつつあり,有益な成果を得つつある. 以上のように,FTY720の経口投与は,ステロイドの外用薬との併用で,難治性ADに対して極めて有用であることを明らかとした.
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