研究課題
腎臓癌は他の固形癌に比べ、放射線療法や化学療法に対して抵抗性を示すことが知られており、遠隔転移の認められる進行性腎臓癌では、5年生存率は10%以下と予後が悪い。近年、抗VEGF抗体やVEGF-TK阻害剤が有意な生存率の延長が認められているものの、十分ではない。そこで我々は腎臓癌の新規創薬ターゲット探索を目的に腎臓癌の外科切除サンプルを用いて、定量的プロテオーム解析を行った結果、数種の癌組織に高発現しているタンパクの同定に成功した。その一部は、活発な増殖活性に基づく解糖系酵素の発現上昇とともに、免疫活性やアポトーシス関連のタンパクの発現上昇が認められた。そこで、これらタンパクが癌のシグナル伝達にどのような役割を果たしているかを検討した。すなわち、腎臓癌細胞株Caki-1、786-0、ACHN細胞に対して、癌部に高発現しているタンパクのsiRNAを処理し、ノックダウンさせた結果、癌の増殖・転移に重要な役割を果たしているVEGFのmRNAならびにタンパク量の発現変動が観察され、VEGFの発現制御に重要な役割を果たしていることが示唆された。さらにこれらのタンパクが診断マーカーとなるか否かについての検討にも着手した。すなわち、腎臓癌患者から、同意を得、腎臓癌の摘出術を受ける前、受けたのち1、2、4週間後の血漿を採取した。現在、これらの試料につき、タンパク量をWestern blotting法にて検討中である。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Biol.Pharm.Bull 30
ページ: 1065-1073