本研究課題はアポトーシスとエンドサイトーシスとの関連性を明らかにすることを目的とし、「アポトーシスが誘導されたときにエンドソームの機能およびエンドソームの膜脂質がどのように変化し、エンドサイトーシスはどのような影響を受けるか」について動物細胞および酵母を用いた検討を行う。 動物細胞におけるエンドサイトーシス経路に及ぼすアポトーシスの影響について解析を行うために、過酸化水素処理による動物細胞のアポトーシス誘導について検討を行った。その結果、過酸化水素処理によりDNAの断片化が観察され、アポトーシスの誘導が示唆された。そこで、アポトーシス誘導時のエンドソーム膜リン脂質組成の変化について検討を行った。過酸化水素未処理および処理後の動物細胞を用い、ショ糖密度勾配遠心法によりエンドソーム画分の調製を行った。各エンドソーム画分より膜脂質を抽出し、薄層クロマトグラフィー法により分離を行った結果、過酸化水素処理により後期エンドソームを構成するリン脂質の組成に変化が観察された。一方、酵母のアポトーシスがエンドサイトーシスや細胞内物質輸送にどのような影響を及ぼすかについて解析を行うため、動物細胞と同様に過酸化水素処理による酵母のアポトーシス誘導について検討を行った。その結果、過酸化水素処理により酵母の生存率低下およびDNAの断片化が確認された。次に、エンドサイトーシス追跡試薬を用いて液胞への小胞輸送におけるアポトーシスの影響について検討を行った結果、過酸化水素処理により細胞内輸送の遅延が引き起こされる可能性が示された。 以上の結果より、アポトーシスの誘導により動物細胞、酵母のいずれにおいてもエンドサイトーシス経路に影響が及ぼされることが示唆された。
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