研究概要 |
本研究は、抗体療法の治療効果を予測し、医療経済学上有益な診断/治療法の開発を目的に、腫瘍抗体療法の予後を予測するシステムを開発し、この評価系のバリデーションを実施すること目標に計画された。平成19年度の研究計画では(1)非ホジキンリンパ腫患者のリンパ組織生検の解析システムを確立し、(2)このシステムによる解析結果と臨床のrituximab治療のresponse rateとの相関を解析すること、(3)その相関解析よりrituximab治療の抵抗性の機序を洗い出すこと、さらにより広範囲の抗体医薬を対象にするため(4)bevacizumabに対する評価系を設計することを予定した。当該年度の研究の進捗実績としては、共焦点光学系を利用したバイオイメージングによる補体依存性細胞障害活性(CDC)評価系と抗体依存性細胞障害活性(ADCC)評価系を確立し、非ホジキンリンパ腫が疑われる患者234例の生検試料のrituximab感受性評価を行った[研究計画の(1)の成果]。このうち比較的症例数の多かったリンパ腫のサブタイプであるろ胞性リンパ腫(FL)と、び漫性大細胞性リンパ腫(DLBCL)症例において治療法により分類を行い、CDC感受性評価とresponse rateの相関を実施した。その結果、rituximab併用化学療法を行った症例では、CDC感受性解析結果は、治療反応群と不応群をきわめて正確に予測し得ることが明らかになった(FL:P=0.00024およびDLBCL:P=0.00226,FISHERの両側Exact検定)[研究計画の(2)の成果]。一方rituximab未投与群では、CDC感受性と治療予後には、相関関係が認められず、rituximab併用化学療法における治療抵抗性の機序の一つとして、CDC感受性を喪失することが寄与していることが強く示唆された[研究計画(3)の成果]。さらにbevacizumabの血管新生への影響、治療効果を評価することを目的に共焦点光学系を利用した血管新生評価法として、微量細胞で管腔形成アッセイ法確立した。現在アッセイ法利用して、大腸がん患者末梢血由来の循環内皮細胞を対象とした評価方法の確立に着手した[研究計画(4)の成果]。
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