研究概要 |
精子形成において,造精細胞とセルトリ細胞間に細胞接着分子が働いていると考えられてきたが,その実体や役割はよく分かっていない。細胞接着分子Spermatogenic immuoglobulin superfamily(SgIGSF)のノックアウト(KO)マウスは精子形成障害を生じる。したがって,このKOマウスを用いて,精子形成における細胞接着分子の機能について解析を行った。精子形成がランダムに同期せずに起こる成獣だけでなく,精子形成が同期して起こる生後初めての精子形成過程である"First wave"を利用した。精母細胞が出現する2週齢と伸長精子細胞が出現する5週齢および成獣マウスにおける遺伝子発現の変化をマイクロアレイにより網羅的に解析した。マイクロアレイの結果,2週齢,5週齢,成獣のKOマウスで共通に発現が増加する遺伝子は,細胞接着分子Eva-1とカリウムイオンチャネルKcnd2であり,発現が減少する遺伝子は,核内蛋白質のNicolin-1であった。定量的RT-PCRにより,これらの遺伝子の発現について確認した。さらに,2週齢,5週齢,成獣でそれぞれ発現が変化する遺伝子がみられ,特に,成獣ではアポトーシスと細胞の貪食に関係する遺伝子の増加が顕著であった。
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