本研究の目的は、プラコード由来感覚器の形成に不可欠なSix1遺伝子の3種類のプラコード特異的エンハンサーを活用したプラコード発生の理解である。本年度は以下の解析を行った。 1)Six1エンハンサーのマウス胚における活性の検討:LacZをレポーター遺伝子として、マウス胚におけるエンハンサー活性を調べた。OT1とCG1エンハンサーについては、ニワトリ胚で同定したプラコード/神経節での活性がE10.5で再現された。一方、PPRエンハンサーについては、E8.0で初期内胚葉での強力なエンハンサー活性を持つことがわかったが、神経板を取り囲むSix1(mRNAとタンパク質)の分布と一致する活性は再現されていない。 2)OT1エンハンサーに作用する上流因子の同定:ニワトリ胚ではOT1の活性に特に重要であった転写因子SoxとSixの結合部位に点突然変異を導入したトランスジーンを作製し、マウス胚(E10.5)での効果を検討した。Sox結合部位の変異では異所的なLacZの発現が見られた。Sixの結合部位の変異では、耳胞と上鰓プラコードでの活性が低下し、鼻プラコードでの活性はほぼ消失し、Six1/Six4による活性化がエンハンサー活性に重要であることが明らかとなった。 3)Six1エンハンサー/Creトランスジェニックマウスの作製:1)で特異的な活性が確認されたOT1とCG1エンハンサーについては、挿入部位によるポジション効果を抑制するために両端にインスレーターを付加した新たなトランスジーンを作製した。E10.5胚のプラコード/神経節で非常に強く特異的なLacZの発現が確認され、最終的なCre発現コンストラクトを作製する準備が整った。PPRエンハンサーについてはプロモーターの変更(hsp68→tk)、テトラマーやニワトリの相同配列の利用、等の方法で検討を続けている。
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