研究概要 |
マウス培養海馬神経細胞に於いて一次線毛の形態形成機構と、そこに局在する受容体の神経細胞への影響を検討する為に以下の2つの実験を行なった。(1) 一次線毛特異的構造蛋白質であるinvを指標に一次線毛形成の動態を検討した。具体的にはInv::EGFP発現ベクターを作成し、神経細胞にこれを導入することで、線毛形成時におけるinv蛋白質の動態を解析した。Invは線毛形成前には細胞体に瀰慢性に存在していたが、線毛の形成に伴って一次線毛内に濃縮されることがわかった。このことから、一次線毛が形成されその作用が発揮されるには、invの局所への集積が必要であることが示唆された。現在、一次線毛に集積することが予想される受容体分子でも蛍光蛋白質融合体発現ベクターを作製し、その動態を解析中である。(2) マウス培養海馬神経細胞の免疫蛍光染色を行なって、神経細胞の一次線毛に局在する受容体を同定した。これらはMCHR1、sstR3, 5-HT6である。更に、これらの受容体に対するリガンドを投与して、一次線毛上の受容体が特異的に刺激された際に起こる細胞内応答を、カルシウム指示試薬である、Fluo-4を用いて検討した。刺激した細胞では、リガンド投与後約30秒で遅発性の細胞内カルシウム濃度の上昇が観察され、その変化は培養液を交換するまで持続した。現在、これらの細胞での反応パタンの解析を行なうのと同時に、カルシウム濃度の上昇を齎す、細胞内メカニズムの解析を開始している。
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