研究概要 |
中枢に向かう脊髄一次求心性線維の軸索は,脊髄背外側部の極めて限局した部位(エントリーゾーン)から脊髄内に侵入する.この現象をもたらす軸索誘引・反発因子の分子実体は部分的にしか解明していない.本研究では,この分子メカニズムの全容を明らかにする目的で,マイクロアレイによる候補遺伝子の検索を行った.具体的には,調製済みのマウス胚微小領域(脊髄背側部・腹側部)のcDNAを用い,かずさDNA研究所(千葉県木更津市)の提供するマイクロアレイによる解析を行った.得られたアレイデータを統計的に解析した結果,脊髄背側部・腹側部における発現量が有意に多い遺伝子を50個ほど選び出すことに成功した.さらに選抜した遺伝子群に関して,その発現をinsituハイブリダイゼーション法で確認し,エントリーゾーンを含む脊髄背側部,もしくは脊髄腹側部に特異的な発現を有する候補遺伝子を絞り込んだ.これらの候補遺伝子の中には未知の遺伝子だけでなく,神経難病の原因遺伝子といった興味深い既知の遺伝子も含まれている.今後これらの遺伝子のより詳しい発現様式を調べるとともに,発生初期胚におけるその機能の解析を進める予定である.
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