研究概要 |
中枢に向かう脊髄一次求心性線維の軸索は,脊髄背外側部の極めて限局した部位(エントリーゾーン)から脊髄内に侵入する.この現象をもたらす軸索誘引因子の分子実体は未だ解明していない.この分子メカニズムの全容を明らかにする目的で,本研究ではマイクロアレイによる遺伝子スクリーニングを実施した.具体的には,脊髄背側部における発現量が有意に多い遺伝子を選び出し,その発現をin situハイブリダイゼーション法で確認することで,エントリーゾーンを含む脊髄背側部に特異的な発現を有する候補遺伝子を絞り込むことに成功した.本年度では,それらの成果を学会および学術雑誌(Brain Res.1249,61-67,2009)にて発表するとともに,興味深いプロフィールと発現様式を有する3つの遺伝子に関しては,様々な時期と部位におけるその発現様式の詳細な解析を進めた.これらの候補遺伝子には神経難病の原因遺伝子に関連することが知られる既知の遺伝子も含まれており,得られた発現様式のデータは,胎生期におけるこれらの遺伝子の機能を調べていくうえで重要な基礎的知見を与えうると考えられる.
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