研究概要 |
我々はすでに正常成獣終脳皮質でいわゆるサテライト細胞が前駆細胞としての役割を持っている可能性を指摘してきた。本年はこの細胞のうち、NG2(+)のものが、どのように分化していくのかを追究した。細胞分裂の標識にはBrdUとKi67抗体をもちい、さらにニューロン系やグリア系の各分化段階のマーカー抗体を用いて、多重免疫染色をおこない、経時的に増殖後の分化過程について観察した。その結果、(1)NG2(+)細胞集団には未熟ニューロンのマーカーであるDCXを発現するものとしないものが存在する。(2)BrdUおよびKi67抗体にて分裂細胞を同定したところ、DCX(+)/NG2(+)細胞のみが該当し、DCX(+)/NG2(+)のサテライト細胞が神経系前駆細胞である確証を得た。(3)BrdU投与14日後の脳で、多くのBrdU陽性細胞はDCX(+)/NG2(+)娘細胞であった。さらに、(4)DCX(+)/NG2(-)細胞はTUC-4陽性・グリア系マーカー陰性であったのに対して、DCX(-)/NG2(+)細胞はGST-pi陽性でニューロン系マーカー陰性であったことから、DCX(+)/NG2(-)細胞はニューロン系に分化しつつある細胞であり、DCX(-)/NG2(+)細胞はオリゴデンドロサイトへと分化しつつある細胞であると考えられた。(5)BrdU投与28日後では、BrdU陽性で、NG2(-)/GST-pi(+)の細胞が観察され、これらはCNPaseにも陽性であったことから、成熟オリゴデンドロサイトへの分化が確認された。(6)このGST-pi反応産物は分化過程で、核内から細胞質にトランスロケ-ションすることも明らかとなった。(7)一方、核膜タンパク質のラミンのサブタイ1プ(A/C,BI,B2)とニューロン分化の関係についても検索し、サブタイプ構成比が分化に従って変動することを明らかにした。(8)レトロウィルスによる分裂細胞標識については、感染実験設備内での動物実験を立ち上げ準備実験をおこなった。
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