研究概要 |
共同研究者である石川らにより作製されたGFPをラベルした骨髄細胞移植動物(あらかじめ放射線照射により骨髄増殖能を抑制した生後2日目までの野生型新生仔マウス(C57/BL6)の静脈内にこれらの骨髄由来細胞を移植した動物:以後,キメラマウスと記載)の全身の臓器・組織を蛍光顕微鏡および共焦点レーザー顕微鏡をもちいて組織学的に観察した。さらにGFPに対する抗体をもちいた免疫染色により電子顕微鏡による細胞学的観察を行った。 その結果,近年,組織幹細胞が存在しており,再生医療に役立つとして注目されている心臓(心筋幹細胞)や皮膚,脂肪組織(脂肪幹細胞)の組織中に多数のGFP陽性細胞が分布すること,そして分布組織に特異的な形態を示すこと,さらに,心臓においてはGFP陽性の心筋細胞が一定数観察されることが明らかとなった。本実験系においてGFP陽性細胞は骨髄に由来すると考えることができることから,我々の観察は様々な組織に,組織特異的形態を示す骨髄由来細胞が常在すること,そして,少なくともその一部は臓器固有の細胞に分化する能力があることを証明したものである。 これら末梢組織中GFP陽性骨髄由来細胞の特性を知るため,マクロファージ,樹状細胞,線維芽細胞の特異的マーカーを指標として,免疫組織細胞化学的手法による解析を試みた。その結果,GFP陽性細胞の多くのものはマクロファージ/樹状細胞マーカーであるIBA1陽性であり,一部に陰性の細胞があること,そして,現時点で最も有効な線維芽細胞マーカーと考えられるHSP47に対する抗体をもちいた免疫染色では,GFP陽性細胞と共存するものはほとんどみられなかった。これらの所見をもとに,現在これら細胞についてさらに詳細な形態的特性の解析を進めている。
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