研究概要 |
GFP標識骨髄細胞移植キメラ動物(石川ら)角膜を共焦点レーザー顕微鏡および電子顕微鏡で観察すると、上皮と実質内にそれぞれ形の異なるGFP陽性骨髄由来細胞が分布すること、それら細胞が線維芽細胞様細胞と接触すること、免疫組織化学的ではGFP陽性細胞の多くはマクロファージ/樹状細胞の特異的マーカー(Iba-1)陽性であるものの、一部に陰性の細胞があることが明らかとなった。次に、GFP標識骨髄細胞移植キメラ動物、および、グリーンマウスと野生型マウスの皮膚を相互に移植した実験系において、それぞれ多数のドナー由来細胞が生着し、分布組織に固有の双極性、多極性、樹状の形態を示すこと、電顕では近接するそれら細胞が相互に接触すること、さらにIba-1および線維芽細胞マーカー(HSP47)による免疫染色では、大多数の細胞が重複することなく、お互い近接または接触することが明らかとなった。総合すると、分布部位の微小環境に基づいて形態分化した骨髄由来細胞が末梢各組織に常在しており、それらの細胞は、間質固有の細胞と密な物理的位置関係により情報交換していることが推測された。もう一点、エッチング試料の電顕(SEM)観察では、骨髄の骨芽細胞や血管内皮細胞と、その周辺の造血幹細胞等との間に、扁平に伸長した線維芽細胞/細網細胞/間質細胞の突起が介在することが確認された。これは組織幹細胞の分布・形態機能維持あるいはニッチを考える上で重要な所見であり、今後の組織幹細胞ニッチ研究への貢献および発展が期待される。これらのうち、角膜の結果は米国解剖学雑誌(Takayama et al.,Anat Rec 2009)に出版、他は、日本解剖学会全国集会および九州支部総会、日本顕微鏡学会他(Ohta et al., 2008; Tanoue et al., 2008, Kobayashi et al., 2008;他)において発表した。
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