脳血流は、個々の脳領域の神経活動に応じて局所的に調節されるが、どのような血管がどのような時間経過で応答するかなどの詳細はわかっていない。血管平滑筋型ATP感受性カリウム(KATP)チャネルのサブユニットKir6.1を欠失させたマウスを用いた申請者らの実験から、神経活動に対応する脳血流調節と脳内細動脈の拡張が関わる様式について新たな知見が得られた。EGFPにより脳血管を選択的に可視化したマウスならびにK_<ATP>チャネルを欠失し、かつ血管を可視化したマウスの作成に成功し、生きた脳スライスを用いた血管の3次元観察に成功し、更にZ軸方向に高速に動くガルバノステージ上に総重量120g以下というガルバノ駆動上の制約の中で、温度制御した潅流システムを作成搭載し、脳スライスを36.5度に安定に維持することに成功した。次いで刺激ならびに記録電極を自在に動かせる極軽量マニピュレーターを作成し、白質を電気刺激し直上の灰白質にて細胞外記録を行った。本システムは2光子ではなく、また近赤外光照射光路がないため、深い位置にある血管観察が難しく、また稼動するステージ上の安定な記録は困難を極め、年度内の発表には至らなかったが、技術的には不可能ではないという感触を持った。一方、血管平滑筋型KATPチャネルを特異的に認識する抗体の作成は、GST fusionならびに遺伝子免疫の2通りの方法で年度一杯挑戦した。実際に可能性を示すいくつかの候補抗体を得たため、詳細な検討を続行中である。年度内に確定していないがin situ hybridizationで見る限り、Kir6.1の局在について従来の知見と異なるパターンが示されており早期の結論を目指す。
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