研究概要 |
脂質メディエータースフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は,細胞の運動制御,細胞骨格制御,形態変化,増殖促進など多彩な生理活性を示す。S1Pはスフィンゴシンキナーゼ(SphK)によりスフィンゴシンがリン酸化されることによって生成し,S1Pリアーゼ(SPL)によりホスフォエタノールアミンとパルミトイルアルデヒドに加水分解される。遺伝子改変マウスの解析から,S1Pシグナルは複数のS1P受容体を介して血管新生及び血管成熟の両過程を制御している。本年度は,私達の作出したSphKトランスジェニックマウス及びSPLトランスジェニックマウスにおける移植腫瘍モデルを用いて以下のことを検討した。1)移植腫瘍の増殖度,2)移植腫瘍の浸潤・転移,及び3)腫瘍血管新生に及ぼす影響。1)では,移植後7-10日間で,SphKトランスジェニックマウスで,増殖がコントロールと比べ腫瘍増殖が早く,SPLトランスジェニックマウスではコントロールと比べ腫瘍増殖が遅い傾向があった。今後,さらに,飼育期間を延長して観察する必要があると思われた。2)では,各群間で,有意な違いは認められなかった。これについても,飼育期間を延長して観察する必要があると思われた。3)では,SPLトランスジェニックマウスではコントロールと比べ腫瘍血管新生が減少している傾向にあった。今後,SphKトランスジェニックマウズとの比較,そのメカニズムについて,検討する必要があると思われた。
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