研究概要 |
1. 研究の目的ならびに具体的内容:非侵襲的な画像法である磁気共鳴画像法(MRI)のうちの一つに,磁化移動効果を利用して画像コントラストをつける『磁化移動コントラスト法(MTC)』というのがある。その手法を用いて,生体組織の正常状態や異常病変をどのように反映するのかについての基礎研究を行い,その臨床応用として,超早期における微小な組織病変検出の可能性を探ることが,本研究課題の目的である。 19年度の研究では,オフレゾナンス飽和パルスの周波数を,水の共鳴周波数の近くに設定することによって,主に細胞成分を強調した画像が得られ,一方比較的遠い周波数に設定することによって,主に線維成分を主とする高分子成分を強調した画像が得られることが分かった。続く20年度は,主に肝臓疾患(肝細胞癌,肝炎,肝硬変など)患者を対象として肝臓のMTC画像を撮像し,組織病変を正常肝と比較検討した。また患者血液生化学データとの相関性も調べた。 2. 得られた結果:MTC法で算出される計算画像値(ECR値と呼ぶ)は,正常肝,肝炎,肝硬変の順に低値を示した。また血液生化学データとの相関では,正常肝ではγ-GTP,ALTと,肝炎では血小板数と,肝硬変ではアルブミン値,血小板数,AST,γ-GTPと強い相関を示した。 3. 意義と重要性:MTC法で得られるECR値は,肝臓の病態変化を示す特定の血液生化学データと有意な相関をすることが明らかになり,このことより,本研究課題において得られる「磁気共鳴画像手法」は,細胞・組織の分子イメージング法として有用であり,かつ臨床応用も十分に可能であることが示唆された。
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