本研究は、心筋L型Caチャネルに対するカルモジュリン(CaM)のチャネル活性調節作用について、その分子機構を解明することを目的としている。これ迄の研究で、CaMはL型Caチャネルα1サブユニット(Cav1.2)のN末部(NT)、リピートI-II間の細胞内ループ(LI-II)、C末部のIQモチーフ領域(IQ)およびpre-IQ領域(CB)を含む近位部(CT1)に結合することが判明している。そこで、平成19年度は、CaチャネルのNT、LI-IIおよびCT1領域のGST融合ペプチドを作成し、CaMとの結合のCa依存性についてpull-down法で検討した。低Ca濃度条件で、CaMのNT、LI-IIおよびCT1への結合モル比は0.1-0.3、結合の親和性はCT1>NT>LI-II(見かけの解離定数:1-10-M)であった。高Ca濃度条件では、全ての結合モル比が上昇し(CT1では約2)、親和性も増大した(見かけの解離定数は0.3-1-M)。以上より、CaM結合の親和性はCa濃度に関わらずCT1が最も高く、高Ca時にはCT1に複数のCaM分子が結合すると推定された。一方、モルモット単一心筋細胞を用いたパッチクランプ実験では、CaMおよびCa結合能を消失させた変異CaM(CaM_<1234>)がcell-free状態(inside-outパッチ)によりrundownさせたCaチャネル活性を濃度依存的に回復させることが判明した。以上より、CaMのチャネル活性調節に関わる結合部位はC末近位部(CT1)の可能性が高いと推定された。
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