生理的条件下に類似した細胞環境でのV-ATPase電流測定を可能にするための実験条件の確立:マウス骨髄細胞より採取した骨髄細胞を間葉系細胞(ST2)存在下あるいはsRANKL存在下で3-10日間培養を行い分化させた破骨細胞の細胞膜V-ATPase電流をホールセル電流で記録した。H+電流密度は、RAW264細胞由来破骨細胞と有意差はなかった。ガラス、コラーゲンコート、プラスチックの順に電流密度が大きくなる傾向があったが、ガラスとプラスチックで1.5倍程度の差であった。また、破骨細胞を接着面から剥離した場合では有意差はなく、外液に添加した水溶性蛍光色素が細胞下面とガラス面の間に入っていたことから、細胞の下面が溶液から電気的に隔絶されていないことがわかった。骨基質モデルの確立:当初予定したハイドロキシアパタイト(HAT)ペレットでは細胞力が確認しにくかったため、Type-Iコラーゲンを塗布した上でcalcium b-glycerophosphateなどを加えHATコーティングを試みた。まだコートが不均一なので改良を加えた上で、V-ATPase電流への影響を検討する予定である。エキソサイトーシスとエンドサイトーシスに伴うV-ATPaseのリクルートメント:破骨細胞では小胞膜が細胞膜に融合してV-ATPaseを高密度に発現するruffled membraneを形成し、この過程にPI3キナーゼが関与している。 PI3キナーゼのインヒビター、ワートマニンを投与するとV-ATPase電流とともに膜容量が減少し、数分から20分程度の短い時間でV-ATPaseのturnoverが起きていることが示唆された。膜容量と電流の同時測定はリクルートメント解析の有力な手段として今後活用したい。成果の一部は日本骨代謝学会、日本生理学会で発表した。
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