培養破骨細胞の細胞膜V-ATPase電流を指標に破骨細胞の活性化に関わる因子とプロトンポンプ活性との関連の解明を続行した。1)エキソサイトーシスとエンドサイトーシスに伴うV-ATPaseのリクルートメント:膜容量は一定ではなくconstitutiveなエキソ/エンドサイトーシスによって細胞膜と細胞内膜の移行が双方向に絶えず行われていることが示唆された。エキソサイトーシスを抑制するPI3キナーゼのインヒビター(ワートマニン、LY294002)を投与するとV-ATPase電流と膜容量が平行して減少した。2)Caシグナリング経路とV-ATP電流活性:細胞外Ca^<2+>およびMg^<2+>濃度を増加させると(〜40mM)V-ATPase電流と膜容量が平行して可逆的に低下した。Ca^<2+>に対する応答は細胞内外のpH勾配に影響されなかった。3)V-ATP電流活性に影郷を与える薬剤の検討:骨粗鬆症の治療薬として用いられているアレンドロネート(ビスフォスフォネート)を投与すると、V-ATPase電流・膜容量が減少し、膜電位がプラス側にシフトする傾向にあった。しかし、Ca刺激の場合に比べるとアレンドロネートによる抑制効果は不安定であった。これらの結果は、Caとビスフォスフォネートは共に破骨細胞のプロトンポンプ機能を抑制するが異なる機構を介していることを示唆する。アレンドロネート作用の定量的検定はこれからの課題である。今後、この2つの抑制応答を手がかりに、細胞膜V-ATPase活性を制御するメカニズムの多様性・相互干渉を明らかにしていきたい。結果の一部は、日本生理学会大会、骨代謝学会、米国骨代謝学会(ASBMR)などで報告した。
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