研究概要 |
破骨細胞による骨吸収機能を担う主体は細胞膜に発現する空胞型H^+-ATPase(V-ATPase)である。本年度は、その活性制御の機構を「機能抑制」に焦点を当て調べた。機能抑制モデルには骨粗鬆症治療薬として汎用されているビスフォスフォネートと生理的ネガティブフィードバックシグナルである細胞外Caを用いた。ビスフォスフォネートの1種であるアレンドロネートを細胞外に投与すると2-5分という早い経過でV-ATPase電流を抑制したが、細胞内に投与しても早期の抑制効果は見られなかった。これまでビスフォスフォネートはエンドサイトーシスで細胞内に取り込まれメバロン酸代謝経路を阻害して抑制作用を発揮すると報告されてきたが、今回の結果は投与初期に細胞外からの直接作用によって酸分泌抑制が起こることを初めて明らかにした。アレンドロネートが細胞内に取り込まれるとこの初期の直接作用が消失するなら、引き続いて起こる代謝を介する慢性の抑制効果と合わせて2相性の抑制効果の可能性を示唆する。一方、生理的抑制刺激として知られる高濃度の細胞外Ca刺激によって生じる細胞膜V-ATPase活性の低下とエンドサイトーシスはsiRNAの導入によるdynamin発現の抑制やdynaminのインヒビター(dynasore, dynamin-inhibitory peptide)で抑制された。gene-silencingmethod,インヒビター、特異抗体の細胞内注入で得られた結果は、このCa-sensing応答過程にphosphohpase C,細胞内Caの増加、calmodulinが関与することを示した。これらの結果から細胞外Caとビスフォスフォネートが異なる機構を介して破骨細胞機能を抑制すると推測されたが、その違いや骨吸収機能制御における意義について、更に検討を重ねる予定である。
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