研究概要 |
本研究代表者は、小胞体と核膜から構成される細胞内カルシウムストアの膜電位がオシレートすることを発見し、カルシウムオシレーションの新規メカニズムとして'luminal potential model'を提唱した(Yamashita, FEBS Lett.,2006)。本研究はカルシウムオシレーションが多細胞間で同期化する機構を、発生初期の鶏胚網膜を実験対象として、電気生理学的、および、小胞体膜、核膜の膜電位を光学的に測定することにより解明することを目的とする。まず、活動電位の同期化により細胞外からのカルシウム流入が同期して起こる可能性について、艀卵5日目(網膜神経節細胞が分化する時期)の網膜を用いて検討した。細胞内電位記録による電気生理学的な解析により、神経上皮細胞、および、分化直後の網膜神経節細胞において活動電位は生じないことが判明し、カルシウムオシレーションの同期化に活動電位は関与しないことが明らかになった。また、電位依存性カルシウムチャネルの活性化による細胞外からのカルシウム流入もカルシウムオシレーションに関与しないことを明らかにした。次に、電位感受性蛍光色素[DiOC_5(3)]を用いて小胞体膜と核膜の膜電位変化を測定した結果、カルシウムストアの膜電位変化が網膜神経節細胞と神経上皮細胞との間で同期化することを明らかにした。カルシウムストアの膜電位変化を共焦点蛍光顕微鏡の光路からフォトマルチプライアを用いて高速測定したところ、DiOC_5(3)の蛍光強度のオシレーションは、繰り返しバースト状に起こる高周波数の変動であることが判明した。この高周波数変動はビデオカメラでは検出できなかったものであり、本年度の研究成果としてもっとも新規性をもつ発見である。
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