研究概要 |
本研究は音受容に重要な役割を果たしている、正の内リンパ腔電位の発生機序を考察すると共にその調節機構を明らかにし、虚血性の急性末梢性感音難聴の治療に役立たせることを目的とする。 1.内リンパ腔より上皮性Na^+チャネル阻害剤投与により、EPは0mVまで低下した。このことから、EPは血管条辺縁細胞の側基底膜で作られていると考えられた。 2.急性虚血性のEPの低下はL型Ca^<2+>チャネル阻害剤であるニフェジピン投与で有意に抑制されたが、代表的な利尿剤であるフロセミドによるEP低下はTRPチャネル阻害剤であるBTP2で有意に抑制された。このことからEP調節には辺縁細胞に存在する種々のCa^<2+>チャネルを介するCa^<2+>流入がEPの発生を調節していると考えられた。また、EPの変化は細胞内Ca^<2+>濃度の変化に基づく内リンパ腔周囲の細胞のタイト結合の変化により起こっている可能性も指摘した(J Physiol Sci, 2009, submitted)。 以上、本年度はTRPCチャネルを中心に研究を進めたが、TRPチャネルの関与について血管状細胞のみならず、腎尿細管細胞でも検討を進めている(Mori Y et al., J Physiol Sci. 58; 199-207, 2008)。
|