研究課題
当該研究により下記の結果が得られた。(1)O型N-アセチルグルコサミン化(O-GlcNAc化)転移酵素の阻害剤であるアロキサンはGluR1受容体反応を増大させた。(2)アロキサンはラット海馬切片のCAl領域より得られた長期増強現象(LTP)を増大した。(3)アロキサン存在下でLTPが誘導された海馬切片におけるGluR1、GluR2の細胞膜(ラフト分画)発現はともに,コントロール群と比較して増加していた。(4)アロキサンはPC-12細胞膜発現GluR1、GluR2のエンドサイトーシスを阻害していた。(5)アロキサンのエンドサイトーシス阻害効果はセリン/スレオニン燐酸化部位除去GluR1、GluR2で認められなかった。(6)アロキサンのエンドサイトーシス阻害効果はO-GlcNAc化転移酵素ノックダウンにより消失した。これらの結果は、(1)セリン/スレオニン蛋白質燐酸化酵素によるAMPA受容体燐酸化は細胞膜表面への特異輸送ガイダンスシグナルとして働き、細胞膜表面の受容体発現数を促進する、(2)細胞膜表面発現AMPA受容体に付加された燐酸基がO-GlcNAcに変換される(O-GlcNAc化)とAMPA受容体エンドサイトーシスを阻害する、(3)AMPA受容体のO-GlcNAc化はLTP維持に必要である、ことを示している。本研究は、AMPA受容体traffickingにおけるO-GlcNAc化の役割を解明し、認知機能の細胞モデルであるLTPの発現機構に斬新な概念を提示している。本研究成果は現在、大きな社会問題であり、急務であるアルツハイマー病を含めた様々な認知症に対する新規治療薬・治療法開発の戦略基盤となり、世界に先駆けるものとなる。このように、当該研究成果の社会的貢献度・その意義は極めて高い。
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