研究概要 |
1. 鍼刺激の膀胱の活動に対する作用 ・生理食塩水の注入によって膀胱が自発収縮を繰り返しているとき、56個体への149回の鍼刺激のうち、38%(56回)で膀胱収縮停止、26%(39回)で収縮の抑制(収縮間隔の延長)が見られた。 ・別の8個体への21回の刺激では、激の効果はなく、これらの個体の膀胱収縮の頻度(1.3±0.6回/分)は、刺激効果のあった個体(56個体, 149試行)の値(2.0±0.9回/分)より有意に低かった。 ・刺激によって膀胱収縮が起こった群と起こらなかった群との間に、脳波の周波数成分に差はなかった。これは、(今回の実験の)鍼刺激の効果は、麻酔のレベルによるものではないことを意味する。 2. 鍼刺激のニューロン活動に対する効果 ・ほとんど全てのEタイプニューロン(4個すべてのE1タイプと16個中15個のE2タイプニューロン)は、鍼刺激によって膀胱活動が抑制されるときに活動が抑制された。 そのうち、2個のE1タイプニューロン、4個のE2タイプニューロンは、膀胱活動の抑制に先行して、ニューロン活動の低下が始まった。 ・Iタイプニューロン14個のうち、4個は、鍼刺激で膀胱活動が抑制されているときにニューロン活動は上昇した。他の3個は、膀胱活動が抑制されているとき、ニューロン活動も低下した。 ・以上の結果は、鍼刺激が膀胱への抑制作用を介さずに脳幹の排尿中枢ニューロンに作用することを示唆する。鍼刺激は、Eタイプニューロンを抑制し、Iタイプニューロンを活性化することによって、膀胱活動を抑制する。また、一部のIタイプニューロンの活動は、膀胱収縮の維持にも関与していると考えられる。 ・鍼刺激による膀胱収縮の抑制は、ビキュキュリンによって阻害されることから、鍼刺激の効果は、GABA作動性ニューロンを介していると考えられる。
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